びゅうおと高所恐怖症
高いところが苦手だ。
この「高いところが苦手」の中には、かなりグラデーションがある。例えば展望台なんかに登った時、怖さを感じてもそれを含めて楽しめる人や、怖いながらもそれなりに我慢して滞在できる人も多い。
僕の「苦手」は結構重篤な方だ。車で橋を通る時も下を見たくないし、そこそこ高さのある展望台にのぼると体が言うことを聞かなくなってしまう。自分でも異常だと思うし、父からもそうだと言われたのだが、一向に改善する気配がない(具体的な手を打っていないのだから当然だけど)。
ところが、最近は高いところにのぼらなくなって、すっかり自分の「苦手」を忘れてしまっていた。この間沼津に行った時などはうっかり展望台にのぼってしまって非常に後悔した。
沼津市一帯は、アニメ:ラブライブ・サンシャインの聖地になっている。すごく入れ込んでいる作品というわけではないが、聖地巡礼を経験したいということもあって、前から沼津には行ってみたいと思っていた。
聖地の一つに、びゅうおという展望台がある。水門と一体化した施設で、高さは約30メートル。津波が来たときには避難場所に使われることもあるいたって真面目な場所だが、普段は100円(子供は50円)払うだけで誰でも入れる。
ここはサンシャイン作中キャラが落ち込んで登ったり

背景にしたり

していたところなので、可能であればチェックしたいと思っていた。というわけで、下までやってきて撮った写真がこれである。

地上からだと、大した高さはないように見える。高いは高いが、少し大きめの街に出ればこのくらいの建物は結構ある。確かに高いところは苦手だが、別に高層ビルに登れないというわけでもなし、なんとかなるだろう。そう思って入場券を買った。
エレベーターはかなり年季が入っていて、階数表示が「1」と「2」しかなかった。降りてくるまで、二、三分はかかったと思う。その時点で、なんとなく不穏なものを感じてはいた。いたが、100円払っていたので、そのままエレベーターに乗って展望台に上がった。
二、三分で展望エリアについた。扉がパッと開いた瞬間、「ああ!? アカン!」と思った。壁は一面ガラス張りで、その向こうには静岡の風景がパノラマめいて広がっていた。窓は全開になっていて、地上30メートルの風がビュービュー吹き込んでいた。
とりあえずエレベーターを降りたが、もう全然動けなくなっていた。スパイダーマンみたいに壁に張り付いて移動し、とにかく茉莉ちゃんの座っていた廊下を一目見ようと思ったが、全然無理だった。僕は同行者にリタイアを宣言し、降りたばかりのエレベーターを呼び戻した。
「頑張ってみようと思ったんですか?」と声をかけてきたのは後ろの夫婦で、僕は「行けると思っちゃったんですよねえ〜」と返した。エレベーターがくるまで二、三分かかって、その間僕はずっと中腰だった。
100円払って展望台の滞在時間は2分もなかったと思う。悔しかったので茉莉ちゃんのスタンプをチケットの裏におして帰ることにした。
ちなみに同行者は僕のリタイア宣言を「冗談かな?」と思っていたらしい。いつの間にかいなくなったせいで、随分驚かされたそうだった。
どうしてこんなに高いところが恐ろしいのだろう、ということを、かなり久しぶりに真面目に考えてみた。どうも、落下の余地を感じてしまうと駄目なようだということがわかってきた。これは100パーセント主観で、ということである。
窓があると割れるかもしれないからダメ。床が薄いっぽいと砕けるかもしれないからダメ。飛行機が傾いたり揺れたりしていると落ちるかもしれないからダメ(僕は飛行機事故のウィキペディアを読むのが大好きだ)。
普通に考えれば、一般人に公開されているような場所はある程度安全が保障されている。展望台もそのはずだ。
でも、何かの拍子でトチ狂った誰かが窓を壊してしまったら? 無差別心中志望者にタックルをかけられたらどうしようもない。というか、僕自身がそういうわけのわからない行動に出てしまう可能性は、十分ある気がする(今でもはさみを使っている時なんかは「腕に差してみたらどうなるんだろう」と思う。実際にはやらないけど)。
もう少し自分と他人を信用できれば、こんなことは思わなくなるのだろうか。
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